解題 人生リーチ、時々ツモ/ぼくのかんがえたさいきょうの麻雀小説傑作選

3つの麻雀小説傑作選 「人生リーチ、時々ツモ 麻雀小説傑作選」が出版された。実は「麻雀小説傑作選」を冠した短編集が出るのは20年ぶり3回目だ。 麻雀小説傑作選(昭和56・1981)廣済堂出版牌がささやく 麻雀小説傑作選(平成14・2002)徳間書店人生リーチ、時々ツモ 麻雀小説傑作選(令和7・2026)徳間書店 以下、「昭和傑作選」「平成傑作選」「令和傑作選」と呼ばせてもらうことにしよう(「傑作選發」・「白」・「中」でもいい)。令和傑作選には編者解説がなかったので、僭越ながら収録作について紹介しておこう。 「カモ」大沢在昌短編集のトップバッターは、書籍情報にも掲載される短編集の顔だ。昭和と平成の傑作選では雀聖・阿佐田哲也が務めたが、今作では阿佐田哲也作品の収録はなく、大沢在昌が務めた。実はこの作品は平成傑作選にも収録されている。底本に初出の「賭博師たち」ではなく平成傑作選の方を記載しているので意図的なものだろう。出世頭だ。物書きである「私」に突然訪れた連絡は、大学時代からの悪友・倉田からだった。私は倉田との二十年を振り返る。初めての高レート雀荘、高級クラブ、結婚と離婚。学生時代の私のことを「いいカモだった」と笑う倉田だったが、私が小説家として大成することはなぜか信じてくれていた。半年ぶりに会った倉田が語る、倉田の受けたギャンブルとは。 「清められた卓」宮内悠介元々は囲碁、将棋、チェス、といったボードゲームがテーマのSF短編集「盤上の夜」の中の一作。麻雀小説としては珍しく、競技麻雀が舞台となっている。新日本プロ麻雀連盟のタイトル「白鳳位」の決勝戦は公の記録にも残らない異常な対局だった。決勝戦に残ったのは、健忘症を患ったプロ・新山、サヴァン症候群の少年・当山、「都市のシャーマン」の異名を持つ新興宗教の教祖・優澄、かつての婚約者だった優澄を追いかけ決勝戦まで勝ち抜いた精神科医・赤田。優澄は、まるで牌が透けて見えるかのような打ち回しで3人を圧倒していく。一体どの様にして? 優澄の目的とは。実在の麻雀団体をもじったタイトル戦や安藤満の名前が登場し、現実と地続きの世界を舞台に描かれているようだ。 「麻雀殺人事件」竹本健治もともとの著作としてゲーム三部作「囲碁殺人事件」「将棋殺人事件」「トランプ殺人事件」が存在し、トランプ殺人事件文庫化の際に書き下ろされた短編。語り手の智久がゲーム三部作の登場人物であるため、この短編だけ抜き出されるとよくわからない部分があるが、一応物語の本筋には影響しない。道すがら雀蜂と出会った智久は、彼が見たという夢の話を聞く。ライオン、ユニコーン、三月兎、帽子屋と共に小さな部屋で麻雀を打っていたのだが、席を外して戻ってきたら部屋の中の全員が鎌鼬にあったかのように切り刻まれていたのだという。夢の中の密室殺人事件を解決をしてやる智久。それ自体はバカミスと呼ぶにも疑問が残るようなオチなのだが、本当の謎はその後だ。麻雀の席は何故「東南西北」の順で振られているのか。麻雀を覚えてから誰もが疑問に思ったであろう不思議に挑む短編。 「われらの地図」筒井康隆小松左京、星新一といった当時のSF作家達が麻雀を打ちながら取り留めもない話をする小話。全編対話体で構成されている。浮いたり沈んだり、といった麻雀用語が、夢の中のような掴みどころのない空気を醸し出すのに一役買っている。ちなみに登場する作家は小松左京・星新一・半村良・豊田有恒・眉村卓・筒井康隆の6人なのだが、ほとんどの作家に麻雀短編小説の執筆作品が存在する。当時はSF作家が麻雀小説を書くブームがあったらしい(参考)。 「接待麻雀士」新川帆立賭け麻雀が合法化された「例和」。人間関係に疲れた搭子(とうこ)はプロ雀士の道を諦め、イカサマを駆使し賭け麻雀を通して合法的に賄賂を渡す「接待麻雀士」の職に就いた。しかし今回の仕事は、元後輩の女流プロが同卓していたり、接待先はちっとも和了らないしでどうにもきな臭い。搭子はこの仕事を無事終えることができるのか。元最高位戦のプロ雀士の作者が描く、架空の法律が立法された近未来日本を描く短編集の中の一作。その癖、行われることは前時代的な女性同士の足の引っ張り合いである。悲しいもんだ。 「雨あがりの七対子」黒川博行平成傑作選にも「東風吹かば」が収録されている「麻雀放蕩記」から別の短編が収録された。作家の黒田と編集者の山元は、取材のためにカジノを訪れる。そこで出会った二人組は通しを使うイカサマ師だった。追い込まれる黒田に訪れた思わぬ助け舟とは。 収録作の雰囲気を掴んでもらうため、情報を簡単にまとめておこう。底本ではなく初出を記載している。 短編名 著者 初出 シーン ページ数 カモ 大沢在昌 (1956-) 賭博師たち (1995) 鉄火場 36 清められた卓 宮内悠介 (1979-) Webミステリーズ! (2011) 競技 80 麻雀殺人事件 竹本健治 (1954-) トランプ殺人事件 (2017) セット 26 われらの地図 筒井康隆 (1934-)
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麻雀プロのファンアートを描くコツ

麻雀プロのファンアートを描くコツ 麻雀プロを応援し始めて早いもので5年が経った。生まれてこの方二次元のオタクとして生きてきたので、その延長でたまに麻雀プロの絵を描いている。三次元ファンアートひよっこの私だが、最近少しはコツも掴めてきたので、ファンアートを描くコツを伝授しよう! 情報を集める 構図の段階から勝負は始まっている。神絵師でない我々としては、麻雀中の所作や普段の仕草でそのプロらしさを出せるなら是非とも採用したいところだ。だから会ったことがある麻雀プロは、直接見たポーズを描くわけでなくとも、なんとなく雰囲気を掴めて描きやすくなる。いい話。麻雀プロに会いに行こう。お金も落とせる。全然関係ないが、大学生の頃、部誌にイリオモテヤマネコを描いたトラウマを思い出した。先輩に「耳の特徴をよく捉えてるね。腹の毛が足りないから剥製の写真を参考に描いたんでしょ」と言われたのだ。情報ソースは複数使おう。 特徴を強調する この辺りの顔の特徴は重要だ。これは麻雀プロというか似顔絵を描くコツだが。特に、複数人を同じ画面に描く時や、顔が似ている麻雀プロがいるときには外見の差異がどこにあるのか意識しよう。 手癖でデフォルメしないように気をつける 三次元の人間を描いていると、二次元のキャラクターを描くときにいかに記号に頼っているかを思い知らされる。私も曲がりなりにも絵描きとして絵柄と呼ばれるものをもっているが、初描きの麻雀プロを描くときにはそのようなルールを全て一度無視するものとしている。手癖で描いてしまうと、上で書いたような特徴を捉えそこねてしまうからだ。特に耳や鼻は二次元のイラストでは差別化はしないことが多い。個人的には目も苦手だ。女性麻雀プロの瞳の表現を安易な美少女的デフォルメに頼ってしまうことが多いので、女性の麻雀プロは男性よりずっと描きにくい。 頑張って描いたファンアートなら喜んでもらえるというナイーヴな考え方は捨てろ。 さて。ここまで読んだ貴方は思ったかもしれない。「うっせーよ」「好きに描かせろ」「なんか失礼じゃない?」「それで麻雀プロに喜んでもらえるかどうかはわかんなくない?」 最後の質問から答えることにする。ファンアートを描いてもらえたら嬉しかろうというのは二次元オタクの感性だ。麻雀プロは二次元オタクじゃないから喜んでもらえるかどうかなんてわかるわけがない。例えるなら、雀荘のゲストに好物も調べず甘いものを差し入れるようなものだ。アレルギーがあったらどうするんだ。 上に述べたコツからわかるかもしれないが、私のファンアートを描く上でのこだわりは、その麻雀プロだと特定できる絵を描くことだ。けれどもそのために私が誇張して描いた特徴は、そのプロにとってはあまり好きではない身体の特徴かもしれない。女性の麻雀プロは写真を撮られるアプリにも気を使うと聞く。だったら、似せて描くよりも可愛く描かれたほうが嬉しい麻雀プロだっているかもしれない。容姿を似せて描くことは自己満足だし、その麻雀プロの容姿から離れて己の絵柄で可愛く描くことも自己満足だ。 でもそんなことを言っていては何も描けない。私は勝手に実在する人物をモデルにして絵を描いて、それを公共の空間に貼り付ける人間だ。誰にも依頼されてない。私が描きたいと思ったから描いた。あくまで自分の表現だというスタンスを崩しちゃいけない。モデルに喜ばれることを第一義にはできない。だから「好きに描かせろ」というコメントにはこう応じるしかない。「好きに描いてください」。それが応援につながるかどうかは、受け手、つまりモデルとモデルのファン達に委ねられていて、作者がそれを決めることはできない。精々できるのは、名誉毀損になるような失礼な表現がないよう気を配ることくらいだ。 それでも頑張って描くしかない それでも頑張って描いたファンアートにしか価値はない。 なぜなら間接的に、共通認識の末に、その頑張りがファンアートを応援の手段として成立させているからだ。つまり、絵を描くのは大変で、その大変なことをしてくれるほど、この人は私を応援してくれるファンなのだと伝わるからこそ、喜んでもらえるからだ。二次元オタクがどうしてファンアートを善なる応援だと信じられるのか。それはオタクが努力の末に描かれた二次元アート作品で育ったからだ。 だからこそ、その頑張りを評価してくれるかどうかはその麻雀プロの価値観次第だ。絵を描くことを趣味としている麻雀プロはその苦労をわかってくれるかもしれない。オタク文化に接している麻雀プロは私達と同じ目線で喜んでくれるかもしれない。でも多くの麻雀プロは二次元オタクとは全く異なる文化圏で育っている。それは頭に入れて、勘違いしないようにしなくては駄目だ。 ここに至って、最早絵の技術力は重要ではない。小学生が描いたファンアートを、下手だからといって喜ばない麻雀プロがいるだろうか。さらには、これはイラストレーションではなくても成立する話だ。例えば、麻雀プロの写真を収集し、並べて装飾するコラージュ的作品も嬉しいと思うプロがいるだろう。加えて現在の状況では、画像生成AIが作る画像はファンアートとして受け入れられない可能性がある。なぜなら、済まない。頑張っていないからだ。ヌクモリティがないからだ。プロンプトは工夫したのか? どれくらいその絵のこと考えたんだ? それが鑑賞者にも伝わる絵になっているのか? 麻雀プロのファンアートを描くコツは、プロに喜んでもらいたいだなんて思わないことだ。そして、そのプロのことを考えて、心を込めて描くことだ。

麻雀をチーム戦にするもの

麻雀をチーム戦にするのは誰か 「いま、最高の個人競技が、最高の団体競技になる」言わずと知れた、MリーグのHPのトップに掲げられるキャッチコピーである。しかし、実際のところ一半荘の間にチームで行う作業は何もなく、競技自体は個人戦だ。昨年行われたRAGE麻雀 feat. M. LEAGUEではアドバイス制度や代走が導入されたが、今後も麻雀が真の意味でチーム戦になることはないだろう。それでもMリーグがチーム戦足りうるのは何故か。試合後に議論する姿。チームメンバーのSNSでのやり取り。ABEMAの特番で明かされるエピソード。それらは全て試合の外の姿だが、その情報があるからこそ、Mリーガーはチームのために必死でトップを取ろうとしているように見えるのだ。 設立1年目のアースジェッツ、3年目のBEAST X、7年目のサクラナイツを見てほしい。アースジェッツは団体混合のチームだから、まだ「チームとして」アースジェッツを応援しているファンはほとんどいないだろう。BEAST Xのように、これからコンテンツの発信を繰り返していくことで、チームのファンが増えていくのだろう。そしてサクラナイツのファンは二度のチームメンバーの入れ替わりを通して、個人を応援することとチームを応援することのギャップに向き合っている。Mリーグがチーム戦だという共同幻想は、運営する側が演出し、観客が受け取ることで保たれている。Mリーグをモデルとして、様々な麻雀のチーム戦が行われている。しかし、雀士を集めてポイントを共有させればチーム戦になるというものではない。そこには演出が必要なのだ。 チームは一日にして成らず:世界麻雀 先日第4回となる大会が行われた「世界麻雀」だが、今大会からはチーム戦が導入された。しかし、個人的な感想としては世界麻雀はチーム戦に見えなかった。どのチームを応援すればいいのかわからなかったのだ。一般に国際大会は自分が帰属する国を応援するものだろうが、日本のチームは45チームの中に8チームもあった。何をもって応援するチームを決めればよかったのだろう。多くの日本の麻雀ファンは、一番好きなプロがいるチームを本命と定めて応援したのではないだろうか。それは個人戦と何が違うのだろう。また、チームが急造すぎたのも熱が入らなかった原因だ。チーム発表から大会当日までは1ヶ月しかなく、チームとして応援する材料を見つけられなかった。しかし、それでもプロ雀士の側は努力をした方だと思う。多くのチームが決起集会と称して顔合わせを行い、それをSNSに投稿していたのだ。大会に勝つことを考えた時、そんなことをする必要は全くなかったにも関わらず。真に世界麻雀をチーム戦として成立させたかったならば、一国1チームに絞った、国別対抗戦をやるべきだったと思う。その予選や、チーム決定後の交流の演出を通して、「日本代表チーム」を盛り上げていくべきではなかったか。 チーム分けの工夫:魂天リーグ 魂天リーグは麻雀ウォッチによって主催されているチーム戦だ。現在第2期が行われている魂天リーグだが、運営サイドがチーム分けを工夫してきたように見える。例えば、渡辺プロ・西乃プロ・牧野プロからなるチームベガは「配信者チーム」と紹介されるし、木原プロ・梅村プロが所属するチームリゲルにおいては、しばしば二人の師弟関係が言及される。所属団体を意識してチーム編成が行われた第一回から、運営が工夫をしてきたことは明らかである。ただ、残念なのは、そのように共通点の多い魂天リーグのチーム内でも、リーグ戦当日以外のチーム配信は現状行われていないことだ。唯一の例外は、神域リーグにも登場したVTuber達によるチーム、チームポラリスである。 チーム作りのプロ達:神域リーグ Mリーグにインスパイアされた麻雀チーム戦の中でも、神域リーグの成功は桁外れと言えるだろう。しかし、神域リーグは著名配信者達のリーグだったから成功した訳では決してない。著名な配信者達はチームをチームとして見せる術を心得ている、演出家であり演者だったから、神域リーグは成功を収めたのだ。ドラフト後、即座に顔合わせ配信を行う。タグを作り、チームとファンの間に一体感を作る。このようなシステムは真の意味でのチームバトルを行うeスポーツの習慣を持ち込んだものだろう。しかし、本来の団体競技が行っている工夫を麻雀で行わず、どうして個人競技がチーム戦となりうるだろうか。また、チームを作る制約の中にもチームらしさを生み出す工夫があった。初年度のみだったが、神域リーグには麻雀の実力に従ったランクが存在した。雀聖3からがAランク、雀傑3からがBランク、といった具合で、各ランクは一人ずつしかチームに所属できない。チーム間の実力の平等性を担保するためのシステムだったが、これは結果的にチーム内の師弟関係や、チーム間でのライバル関係を生み出すシステムとなった。そのように本番の外の練習配信や交流会できた、配信者同士の「関係性」がチームを形作る。チームができるから、本番の応援配信が盛り上がるのだ。 チームへの帰属意識:WROTL・海桜戦・新春まーすた麻雀チームバトル ここまでは主に見て楽しむチーム戦について論じたが、私達が参加できるチーム戦も存在する。近年だと、龍龍が主催するネット麻雀のチーム戦「WROTL」が大規模だろう。これは主に龍龍ユーザーが参加して楽しむことを目的としたチーム戦だが、日吉プロ・滝沢プロ・本田プロ・日野プロが所属するチーム「1859」や、藤川プロ・早川プロ・西乃プロ・茨城プロが所属するチーム「イケメンアベンジャーズ」は、チームメンバーをゲストとしたリアル麻雀のイベントを行い、応援できるチーム戦としてもWROTLを盛り上げていたことは特筆に値する。WROTLのように、麻雀のチーム戦といえば友人同士がチームを組むイメージの方が主流だろうが、実際には見知らぬ人同士がチームを組める麻雀チーム戦も存在する。 サクラナイツとU-NEXT Piratesが2行うオンライン麻雀大会「海桜戦」はその一つだ。あらかじめ所属したいチームに申し込み、所属するチームとは無関係に卓組みが行われ、それぞれのチーム上位100人分の成績が計上されるシステムになっている。こうすることで、チーム間の人数の不平等性を緩和できるのだ。ただ、唯一不満があるのは、同卓相手がどちらのチーム陣営なのかわからないという点だ。つまりこの大会において、ファンはチームに帰属意識を持っているが、ファン同士は同じチームに帰属しているという連帯感を持てないのだ。大会用に雀魂の1日限定の称号を作って、それぞれのチーム所属者に専用の称号をつけてもらう、といったシステムを導入するのはどうだろうか。 一方で、リアル麻雀の大会「新春まーすた麻雀チームバトル」は参加者がどのチームに属しているかをわかりやすく示している。ノベルティとして大きな缶バッチがついてくるのだ。 実は、このチームバトルは海桜戦とは違って、全半荘でチーム同士が対戦するように卓組みがされているので、参加者が条件戦を望まない限り、対戦相手のチームを認識できるようにする意味はない。しかし、多くの参加者が缶バッチを付けることで、チームメンバー同士の会話が生まれるのだ。麻雀イベントでの参加者同士の会話は卓内で行われるのが主なところを、チームメンバーを認識できることによって、もう一軸、会話の機会が生まれる工夫になっている。 #新春麻雀チームバトル – Search / X See posts about #新春麻雀チームバトル on X. See what people are saying twitter.com 参加者の多くがバッチをつけて記念撮影したり、バッチにサインを貰ったりしている様子から、このノベルティの効力が伝わるのではないだろうか。 まとめ 麻雀は本質的には個人の競技だ。それを私達がチーム戦だと感じられるのは、運営とチームに所属する雀士達がチーム戦らしさを演出するからだ。その演出がない麻雀はチーム戦ではない。ただのポイントを引き継ぐ個人戦にである。

都市伝説を解体したオタクはこのミステリを読め!(虚構推理編)

都市伝説解体センターが流行ってから「都市伝説解体センターが好きな人はこのゲームもやって!」と言ったツイートが流れてきますけれども(私は「パラノマサイト」をオススメしたいです:おい!ミステリオタクのパラノマサイト感想聞いてくれやありがとう)、当方活字を愛するオタクなので強く言わせていただきたいです。ミステリ小説を読め!!!実際、ゲームやミステリに不慣れでも都市伝説解体センターが好きになった人って、テキストの味やミステリの構造が刺さったと思うんです。じゃあミステリ小説読みましょ。名作はいくらでもありますよ。そういう訳で、都市伝説解体センターが好きな人にオススメのミステリを紹介します。 虚構推理 城平京 著(2011年) あらすじ 主人公の岩永琴子は幼い頃に妖怪たちに連れ去られ、片目と片足を取り上げられて妖怪たちの知恵の神として祀り上げられることになりました。それ以来、琴子は妖怪たちの困りごとを解決しながら暮らしています。聡明でお嬢様で少し世間離れしている琴子も人の子。中学生の頃、病院で出会った桜川九郎に一目惚れしてしまいます。九郎は人魚と件(くだん)の肉を喰らった、不老不死とちょっとの未来改変能力をもつ普通の高校生です。九郎にはお付き合いをする女性がいましたが、琴子が大学生に上がる頃、ちょっとした事件で別れることになりました。それを知るや否や琴子はアプローチを決行。半ば無理矢理お付き合いを始めます。そんな二人が妖怪たちの依頼で駆り出された先では、顔の潰れたアイドルの亡霊が現れて、夜な夜な鉄骨を振り回すとの噂。その噂は「鋼人七瀬まとめサイト」を通してネット上で拡散されていき、次第に都市伝説めいていきます。それに従って暴力性も増していく亡霊アイドル。琴子はそれを、現代人の妄想と願望が作り上げた「想像力の怪物」と呼びます。そしてついに出てしまった被害者は、九郎の元カノの関係者でした。果たして琴子と九郎は亡霊を退治できるのか……。というのが、虚構推理シリーズ第1巻「虚構推理」のお話です(もともとは「虚構推理 鋼人七瀬」というタイトルだったのが、講談社タイガに移ったときに改題されました)。 都市伝説解体センターファンにココがオススメ! 都市伝説が活躍する多重解決ミステリ! 都市伝説解体センターが影響を受けたミステリとして、ファミ通のインタビューでは、京極夏彦の百鬼夜行シリーズが挙げられています。百鬼夜行シリーズはまるで妖怪が起こしたような事件を解決していくミステリですが、この妖怪を都市伝説に置き換えたものが都市伝説解体センターの構図だと語られています。虚構推理にも妖怪がたくさん登場しますが、1巻の鋼人七瀬編は明らかに妖怪ミステリでなく都市伝説ミステリです。その理由は、現代を生きる人の噂が謎を形作るからです。あなたも経験ありませんか? ツイッターで流れてきたそれっぽいツイート。最初は信じてしまったけど、フェイクニュースだった。いやいや、実はそれ実験でした、って。それ、多重解決です。多重解決というのは、ミステリの解決パートの技工の一つで、要するに解決パートがいっぱいあるということです(「丸太町ルヴォワール」、最愛の作品なんで読んでください)。匿名の噂に隠れた都市伝説の真実は移ろいやすいもの。その移ろいやすさが虚構推理では多重解決という形で表現されています。どうして多重解決することが鋼人七瀬を倒すことにつながるのか? それは是非本編を読んでください。 掛け合いがキュート! 私の都市伝説解体センタープレイ1周目の記憶ですけれど、ミステリオタクの悪い手癖でつい正解の選択肢を選んでしまって、結構あっさり終わらせてしまったんですよ。2週目で阿呆のあざみにセンター長が向ける視線が優しすぎて頭抱えたワケなんですが、都市伝説解体センターのユーモアあるテクストに気が付かず終わってしまうところだったなんて危ないところでした。虚構推理も独特のユーモアを持つ作品です。岩永琴子、自信家で教養があってユーモラスだが下ネタが好きで少し変な女の子でして……。一挙一動一発言が可愛い。琴子をすげなく扱う九郎とのやり取りを楽しんでください。九郎の元カノに歯をむき出しで威嚇する琴子が可愛いのなんのって。 シリーズ物&メディアミックス! 鋼人七瀬編だけでも十分楽しめますが、続きが欲しくなれば「虚構推理」に改題された講談社タイガからシリーズ化されています。さらにコミカライズとアニメ化も。実は作者の城平京先生は「スパイラル 推理の絆」で有名な方で、漫画原作も達者です。鋼人七瀬編のコミカライズに抜擢されたのはこれが商業デビューとなる片瀬茶柴先生。この先生がまた素晴らしき御方で、琴子を蝶よ花よと可愛がってくださり、城平先生もコミックスを大変気に入られました。そして以降はたびたびコミックスが先行して世に出るようになったのです。めでたしめでたし。虚構推理のコミカライズはただのコミカライズではないぞということで、漫画が読みやすい方はこちらを読んでいただいても構いません。ミステリ小説を読めと言っておいてなんなんですけども。ただ、小説版のターニングポイントである「虚構推理 逆襲と敗北の日々」の最終話は小説版とコミックス版で分岐があるので、どちらも読んでおいてほしい……。これは都市伝説解体センターで例えると、小説版で6話とエピローグの間に書き下ろしのセンター長の独白が収録されているようなものです。さらにはこのペーパーを書いている最中に2年振りの小説版最新刊「虚構推理 忍法虚構推理」にてアンサー編がお出しされ、こちとら絶賛阿鼻叫喚といった次第です。これは都市伝説解体センターで例えるとあらゆるメディアミックスが終わってブームも落ち着いたかと思われた1年後、センター長の独白を受けて突然DLCで5年後のあざみが登場、みたいな話でした。よくわからないですよね、すいません、こっちも混乱していて。また、「奇々解体」を愛する皆さんには、アニメ化の際に書き下ろさせたアニメ1期オープニング「モノノケ・イン・ザ・フィクション」も是非聞いてほしいところです。琴子ちゃんの告白が胸に迫ります。都市伝説解体センター、アニメ化するんですかね。いかにもしそうですね。 ということで、都市伝説解体センター好きにオススメのミステリ「虚構推理」編でした。11月のオンリーでは「ハサミ男」編をお届けします。また次回お会いしましょう。

牌がささやく : 麻雀小説傑作選メモ

短編名 著者 生没(年) 出典(書名) 出典(出版社) 出典(年) 初出(書名) 初出(年) 新春麻雀会 阿佐田哲也 1929-1989 色川武大 阿佐田哲也 全集10 福武書店 1992 週刊文春昭和62年1月1/8合併号 1987 三人の雀鬼 清水義範 1947- 蕎麦ときしめん 講談社文庫 1989 蕎麦ときしめん 1986 雨の日の二筒 五味康祐 1921-1980 雨の日の二筒 廣済堂文庫 1986 暗い金曜日の麻雀 1967 カモ 大沢在昌 1956- 賭博師たち 角川文庫 1997 賭博師たち 1995
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