十年近く住んだ関西圏を離れて生まれ育った関東圏に戻ることになった。
とても悲しい。私は関西が大好きだ。主に愛しているのは大学時代を過ごした京都だが、関西のことは全部好きだ。そして東京という街が大体嫌いだ。
それを東京に暮らす妹に伝えると「私は姉と東京で会えるの嬉しいのに!」(何故か私は彼女のことを「妹」と呼ぶし、彼女もそれを真似てか私の事を「姉」と呼ぶ)と言われて驚いた。私だってその点については全く同意であったからだ。
私の中で「東京という街に暮らすのが嫌」ということと「東京に住むことで親しい人達に会えるのが嬉しい」という事象はかなり独立だと気が付いた。後者は前者を打ち消す理由にならない。
「生まれ育った場所が嫌い」と言うと、あぁきっと小さい頃は友達が全然いなくて家庭環境もよくなかったのが大学で外に出ていい経験をしたんだろうな……といった想像をされるのかもしれないが、別に東京が嫌いなのはそういった理由ではない。友達おるわ。じゃあ何故よと言われると困るが、東京という街が昔から好きでないのだ。
そういえば高校生の頃からずっと、瀬戸内海に面した町に住みたいと言っている。これも特に理由はない。大体、瀬戸内沿岸の町を訪れた事さえほとんどないのだ。でも瀬戸内海に住みたい。東京から関西に越して少しは接近したと思ったのに残念だ。生涯をかけてじりじりとお近付きになるしかないのか。
思うに、私は町のイメージの中に暮らしている。東京に住む人達は、東京という盆の上に今乗っている菓子なのであって、菓子が好きでも盆は食べられない。菓子は明日には盆を飛び出していってしまうかもしれない。私には何の断りもなく。
そういう訳なので、私の近所に住む皆様は私が物理的に側にいる間が機会と思って大いに酒を飲んでください。そして側を離れた後も一緒に酒を飲んでください。