そもそも漫画を打ち切るな

楽しみにしていた漫画の更新日に待ってましたとブラウザを開くと、展開は突然急になっており、そして何の前触れもなく終わっている。ご愛読に感謝します、次回作をお楽しみに!
打ち切りというやつだ。
すると、さっきまで私が大事にしていたものは未完という傷物になってしまう。一体私は何を好きでいたんだ?終わるその瞬間までの物語は変わりないはずなのに、不安にさえなる。
世の中には小説に漫画に映像に無数の物語が存在するが、物語は終わらなければ物語じゃないと思う。いい話とか悪い話とかそれ以前に、そもそもそれを評価できない。途方に暮れるだけだ。
もちろん漫画の作者は読者がそんな気持ちにならないように、限られた話数の中で懸命に終わりを組み立てる。でもそんなものは無理難題だ。打ち切りだと明言されようがされまいが、余程周到に準備されたゴールでなければ(松井優征の逸話を踏まえて喋っているが、そこまで考えているのならそれはもう一種の「作者が想定した終わり」だろう)読者にだってわかるに決まってる。
なんなんだ。馬鹿にしてるのか。
考えてもみて欲しい。途中まで読んでいた小説が突然ある項をめくったら真っ白のページになることがあるか?
1クールだと思いこんでいたドラマが8週目で突然別の番組になることがあるか?(追記:あるらしい)
そんなものは乱丁だし放送事故だ。でも漫画ではそういうことが当たり前のように起こる。
そういうことができるのはエッセイ(漫画)や随筆(文)であり、媒体で左右されていいものじゃない。
物語は作者の志の通りに終わるべきだろ。道半ばの人気に左右されていいものじゃない。
自分の作品を打ち切りという形で終わらせたい作者なんてほとんどいないとは思う。最近は出版社がファンから非難されるので、打ち切りを作者が明言することさえ避けられるらしい。見る目がないとか電書がどうとか初動がなんとか。
でもそういうシステムに甘んじているという意味では、私にとって出版社も作者も同罪だ。システムが悪いと言っているので、出版社も作者も悪くないとも言える。
打ち切りの話ばかりしたけれど、連載継続だって同じだ。
ストーリーを描く漫画家は連載前にこの話がおおよそどれくらいで終わるか出版社に提示するべきだし、出版社は一度載せる価値があると決めたなら作者が提示した終わりまで枠を買いきるべきだと思う。既存の形で言うと、短期連載に当たるのか。
多分こういう形では長編ストーリー漫画は生まれない。
そもそも漫画は小説に比べれば同じ物語を紡ぐための作業量は膨大で、長い話を語るのに向いた媒体ではないだろう。
でもそのように、物語の長さが媒体に縛られるのは漫画に限った話じゃない。映画は4時間撮れないからといって、前編だけで終わる映画があるか?2時間なら2時間で、それに適切な脚本を作るのがプロの筋だろ。
物語を続けていきたいなら、作者の実績等を鑑みてシリーズ化や続編の措置を取って欲しい。あるいは描き下ろしの形で作者が出版社に持ち込むかだ。打ち切りは乱暴すぎる。
数話単位という本来その長さでは評価できない長さで物語の商業的成功をチェックして、駄目なら切り捨てる。それは出版する側からはローリスクだろうけれど、今まで読んできた物語が突然終わるというリスクを読者に押し付けていることを自覚しているのか。
出版社の見る目がないとか作者は悪くないとか読者が声を上げて応援とかそういう話してない。そもそもストーリー漫画を打ち切るな。そういう話でした。
追伸。偉そうなことを書いたのは、最近まで描いてた漫画を最後まで無事描き終えて安心したからです。よかったよかった。