法月綸太郎の冒険「死刑囚パズル」読んだ。人が事あるごとに勧めていた&書きたい人のためのミステリ入門で2pt溜まったため。

すげぇ……。久々に感動するほど美しいミステリを読んだ……。
ロジックがきれいすぎる。伏線だと気が付かれても看破されないのが伏線ってこういうことだ。先月エジプト十字架の謎を読んだ時はそこまでピンとこなかったが、これを読んだことでエジプト十字架もロジックは十分美しかったと思えた。要するに短編の中にどれだけきれいに情報を織れるかということなんだよな。そこはどうしても文章量との相対的な比較になる。多い文量に情報を詰め込めるのは当然の原理だから。
でも短編だからといって単なるパズルに着地していないのがすごい。そこはやっぱり死刑制度という題材を社会派には寄り切らずにクールに書ききったからだと思う。その冷たさが、絞首刑になった死体の描写が、読者に自然と何かを考えさせる描写になってる。執行人に死刑制度が必要かどうか尋ねるシーン、ロジックの方には全然絡んでこなかったもんな。松山所長の人柄とか、本当にこういう場所にこういう人が暮らしているのだろうと思うもん。
動機はそこまで意外性のあるものではなかったが(殺さなかったら秘密がばれてしまうとかならより理解できたかもしれないが、そうなったらあの寓話は効かなくなってくるからここはどちらかを取るしかない)、筋は通っているし背景の説明もよくもまぁあんなワンシーンに詰め込んだなって感じだし十二分だ。
そして註8!拘置所の細を穿った描写がずっと続いて全体的になんで注をつけるんだ?という疑問を持たせておいての註8でトドメを刺してくる使い方が美しすぎる。これを註にもってくるのがすごい。私が作者なら絶対に文中に入れたくなってしまう。でもそれではここまで築いてきた拘置所刑務所のどうしようもなさみたいな描写から浮くからここでいいんだろうな。3章4章でギリシャ神話の引用をしているからそこまで嫌味にもならない。
逆に綸太郎とパパのことはよくわからなかったので(法月シリーズこれが初めて。ミステリに関しては出版順に拘るのはやめた……)エラリィ・クイーンなんだろうなと思って読んだ。読んでてよかったエラリィ・クイーン。法月とエラリィは息子と父のコンビだが、ミステリの世界で探偵助手にされていない関係性って存在してるんだろうか。
すげぇよ~。一作目からこんなに驚かされたので残りの作品も楽しみ。
今日の雀
迷ったら亜リャンメンを切っておけ。